物質の塩基性と共役酸の安定性 薬剤師国家試験102回問10
第102回薬剤師国家試験 問10
次のアミノ酸のうち、破線で囲んだ部分の塩基性が最も強いのはどれか。1つ選びなさい。
第102回薬剤師国家試験 問10 解答解説
2のグアニジノ基の塩基性が最も強い。
ブレンステッドの定義によると、塩基とはH+を受け取るものであり、塩基性の強さとはH+の受け取りやすさのことである。
塩基となる物質(B:)はプロトン(H+)を受け取って陽イオン形(BH+)となり、BH+はプロトンを放出してB:に戻る。
BH+を塩基(B:)の共役酸と呼ぶ。
★ 共役酸(BH+)の安定性が高いほど、塩基(B:)の塩基性は強い。
含窒素化合物の共役酸とは、窒素(N:)がH+を受け取ってNH+になった陽イオンのことである。
共役酸(NH+)は、共鳴により正電荷が広く分散するほど安定性が高い。
2のグアニジノ基の共役酸(NH+)は、共鳴により正電荷が3つの窒素に非局在化されるので、かなり安定性が高い。
よって、グアニジノ基の塩基性はかなり強い。
なお、2の化合物はL-アルギニンである。
L-アルギニンはグアニジノ基を有するので強い塩基性を示し、
人のたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中で最も強い塩基性を示すことも覚えておこう。
他の選択肢について述べる。
◆ 1について
COOHは主にH+を放出する酸性官能基として働く。
なお、1の化合物はL-アスパラギン酸であり、
人のたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中で最も強い酸性を示すことも覚えておこう。
◆ 3について
3の化合物はL−グルタミンである。
★ アミドの窒素は塩基性を示さない。
詳細は下記のリンク先を参照
アミドの窒素は塩基性を示さない 85回問14a
◆ 4について
4の化合物はL-トリプトファンである。
4の破線で囲まれた環をインドールという。
インドールは塩基性を示さない。
★ 環の窒素の非共有電子対がp軌道に収容され、環の芳香族性に寄与している場合、その窒素は塩基性を示さない
インドールでは、窒素の非共有電子対がp軌道に収容されることで、環は芳香族性を示し、結果、環は安定なものになっている。よって、Cのインドールは塩基性を示さない。
◆ 5について
5の化合物はL-ヒスチジンである。
5の破線で囲まれた環をイミダゾールという。
5のイミダゾールには2つの窒素がある。
一方の窒素では、p軌道に非共有電子対が収容されており、この非共有電子対は環に非局在化されるので相手に供与できない。
もう一方の窒素では、sp2混成軌道に非共有電子対が収容されており、この非共有電子対は供与可能なので塩基性を示す。
イミダゾールでも、共役酸は共鳴安定化するが、グアニジノ基より塩基性は劣る。
★参考外部サイトリンク
塩基性の強弱(猫でもわかる有機化学さん)
★他サイトさんの解説へのリンク
第102回問10(e-RECさん)