ケトン,ジケトン,ジエステルの酸性度 薬剤師国家試験94回問4d
第94回薬剤師国家試験 問4d
下記のA〜Cの3つの物質を酸性度の強いものから並べなさい。
A. H3CCOCH3
B. CH2(COCH3)2
C. H3CCOCH2COOCH3
第94回薬剤師国家試験 問4d 解答解説
酸性度の強いものから、
B. CH2(COCH3)2 ジケトン >
C. H3CCOCH2COOCH3 ジエステル >
A. H3CCOCH3 ケトン
である。
本問ではケトン、ジケトン、ジエステルの炭素酸としての酸性度の比較を行うが、
それには共役塩基の安定性を比較する。
本問での共役塩基の安定性の比較においては、
共役塩基の負電荷の共鳴による非局在化がポイントである。
詳細は下記のリンク先を参照
酸性度と共役塩基の共鳴安定化 第86回問10c
共役塩基の負電荷が非局在化する度合いが高いほど、
共役塩基の安定性は高い。
本問のケトン、ジケトン、ジエステルの共役塩基は下記のように共鳴する。
◆ケトン
◆ジケトン
◆ジエステル
★ 2つのカルボニルに隣接するCHは、1つのカルボニルに隣接するCHよりも酸性度は強い。
共役塩基は負電荷が広く分散されるほど安定性が高い。
ジケトン、ジエステルのように2つのカルボニルに隣接するCHは、
共役塩基の負電荷が2つのカルボニルとの間で分散されるため、
1つのカルボニルに隣接するCHよりも共役塩基の安定性は高く、
元のCHの酸性度は強い。
★ ケトンに隣接するCHは、エステルに隣接するCHより酸性度は強い。
エステルはカルボニルにアルコキシ基(OR)が結合しているとみなせる。
アルコキシ基(OR)はsp・sp2炭素に対して電子供与性基として働く。
よって、ジエステルの共役塩基では、
アルコキシ基の電子供与効果により負電荷の非局在化が妨げられるため、
ジケトンの共役塩基よりも負電荷の非局在化の度合いは低いと考えられる。
したがって、ケトンに隣接するCHは、エステルに隣接するCHよりも酸性度は強い。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)