アミンの塩基性の強さ 総合問題 薬剤師国家試験92回問6
第92回薬剤師国家試験 問6
下記のA〜Eを塩基性の強い順から並べなさい。
第92回薬剤師国家試験 問6 解答解説
塩基性の強いものから、
である。
物質同士の塩基性の比較のポイントを下記の@〜Cで示す。
@ 環の窒素の非共有電子対がp軌道に収容され、環の芳香族性に寄与している場合、その窒素は塩基性を示さない
Bのピロールでは、窒素の非共有電子対がp軌道に収容されることで、環は芳香族性を示し、結果、環は安定なものになっている。
よって、ピロールは塩基性を示さない。
A 非共有電子対が共鳴により非局在化すると塩基性が弱くなる。
詳細は下記のリンク先を参照
脂肪族アミンと芳香族アミンの塩基性の比較 89回問4の1
C,D,Eのように芳香環に直接アミンが置換しているものを芳香族アミンと呼ぶ。
脂肪族アミンと芳香族アミンの塩基性度の比較では、
脂肪族アミン > 芳香族アミン
である。
したがって、芳香族アミンであるC,D,Eの塩基性は脂肪族アミンであるA(ピロリジン)の塩基性に比べて弱い。
芳香族アミンや共役系のように窒素の非共有電子対が共鳴により非局在化する場合は、非共有電子対が供与されにくいので塩基性が弱いことを押さえておこう。
B 置換基の電子供与性電子効果でN原子の電子密度が高くなれば塩基性は強くなり、置換基の電子求引性電子効果でN原子の電子密度が低くなれば塩基性は弱くなる。
置換基の電子効果については
下記のリンク先を参照
誘起効果・共鳴効果とは
芳香族アミンの窒素の電子密度および塩基性と官能基の芳香環に対する電子効果の関係について述べる。
・ 官能基による電子供与性の電子効果で芳香環の電子密度が高くなれば、芳香族アミンの窒素の電子密度も高くなり、芳香族アミンの塩基性は強くなる。
・ 官能基による電子求引性の電子効果で芳香環の電子密度が低くなれば、芳香族アミンの窒素の電子密度も低くなり、芳香族アミンの塩基性は弱くなる。
よって、置換基ごとの芳香族アミンの塩基性の強さの序列は下記の通り。
◆ Dについて
メトキシ基(−OCH3)が結合するDの芳香族アミンでは、メトキシ基の芳香族化合物に対する電子供与性の電子効果により、芳香環およびアミンの窒素の電子密度が高まり、芳香族アミンの塩基性は強くなっている。
◆ Eについて
ニトロ基(−NO2)が結合するEの芳香族アミンでは、ニトロ基の芳香族化合物に対する電子求引性の電子効果により、芳香環およびアミンの窒素の電子密度が低下し、芳香族アミンの塩基性は弱くなっている。
以上より、芳香族アミンのC〜Eについて、
塩基性度の強いものから、
である。
C 窒素にアルキル基が結合すると電子供与性電子効果により塩基性が強くなる。
アルキル基は電子供与性の誘起効果を与える。供与可能な非共有電子対を持つ窒素にアルキル基が結合すると、アルキル基の電子供与性電子効果により窒素の電子密度が高まり非共有電子対を供与しやすくなることから、窒素の塩基性が強まる。
ピロリジンでは、窒素に2つのアルキル基が結合しているとみなせる。
よって、ピロリジンでは、アルキル基による電子供与性電子効果で、供与可能な非共有電子対を持つ窒素の電子密度が高まり、窒素の塩基性は強いと考えられる。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)