誘起効果と電気陰性度とカルボン酸の酸性度pka 薬剤師国家試験103回問10
第103回薬剤師国家試験 問10
pKa値が最も小さいカルボン酸はどれか。1つ選びなさい。
第103回薬剤師国家試験 問10 解答解説
正解は2である。
「pka値が最も小さいもの」または「Kaが最も大きいもの」は、「酸性が最も強いもの」である。
酸の酸性度とその共役塩基の安定性・塩基性度との関係は下記の通り。
・酸の酸性が強い⇔共役塩基の安定性が高い、または、塩基性が弱い
・酸の酸性が弱い⇔共役塩基の安定性が低い、または、塩基性が強い
よって、酸の酸性度を比較するには、その共役塩基の安定性や塩基性を比較すれば良い。
本問では、置換基による電子効果が物質の酸性度に与える影響を考える。
化合物中のある水素の酸性度について、
置換基の電子効果と共役塩基の安定性・塩基性の関係は下記の通り。
・ 置換基により電子供与性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは低くなり、
共役塩基の安定性は低くなるため、
酸の酸性度は弱くなる(酸解離定数Kaは小さく、pKaは大きくなる)。
・ 置換基により電子求引性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは高くなり、
共役塩基の安定性は高くなるので、
酸の酸性度は強くなる(Kaは大きく、pKaは小さくなる)。
本問では、sp3炭素にハロゲンが置換することによる物質の酸性度の変化を考える。
置換基による電子効果について、sp3炭素に置換している場合は誘起効果のみを考えればよい。
ハロゲンなどの電気陰性度の大きい原子の置換により、
電子求引性の誘起効果(−I)が生じ、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いが高まり、
共役塩基の安定性は高まるので、
元の酸の酸性度は強くなる。
置換する原子の電気陰性度が大きいほど、
電子求引性の誘起効果(−I)は強く働き、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは高くなり、
共役塩基の安定性は高くなる。
ハロゲンの電気陰性度は大きいものから、F>Cl>Br>I である。
以上のことから、
フッ素が置換するカルボン酸の共役塩基は電子求引性の誘起効果が最も強く働き、
共役塩基であるCOO:−の負電荷の非局在化の度合いは最も高く、
共役塩基の安定性は最も高いので、
COOHの酸性度は最も強い(最もKaが大きく、最もpkaが小さい)。
なお、置換基の誘起効果に関する補足事項として、
誘起効果の官能基との距離による変化について、
下記のリンク先の記事も併せて参照していただきたい。
置換基の誘起効果の官能基との距離による変化 酸性・塩基性への影響
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)
誘起効果・共鳴効果による酸性度の変化(薬学これでOK!さん)
★他サイトさんの解説へのリンク
103回問10(e-RECさん)