脂肪族,芳香族アミンの塩基性の強さの比較 薬剤師国家試験93回問12の3
第93回薬剤師国家試験 問12の3
下記の記述の正誤を判定してみよう。
プロカインの2つのアミノ基のうち、第3級のアミノ基よりも第1級のアミノ基の塩基性が高い。
第93回薬剤師国家試験 問12の3 解答解説
× プロカインの2つのアミノ基のうち、第3級のアミノ基よりも第1級のアミノ基の塩基性が高い。
→ 〇 プロカインの2つのアミノ基のうち、第1級のアミノ基よりも第3級のアミノ基の塩基性が高い。
本問におけるアミンの塩基性の比較のポイントを下記の@およびAで示す。
@ 非共有電子対が共鳴により非局在化すると塩基性が弱くなる。
窒素の非共有電子対が供与されやすいほど塩基性は強い。
アミンがsp炭素またはsp2炭素に結合している場合、窒素の非共有電子対が共鳴により非局在化し、非共有電子対が供与されにくくなるため、窒素の塩基性は弱い。
プロカインの第1級アミンのように芳香環に直接アミンが置換しているものを芳香族アミンと呼ぶ。
芳香族アミンでは、下記のように窒素の非共有電子対が共鳴により芳香環に非局在化して供与されにくいので、特に塩基性が弱い。
よって、
脂肪族アミンと芳香族アミンの塩基性度の比較では、
脂肪族アミン > 芳香族アミン
である。
したがって、芳香族アミンであるプロカインの第1級アミンの塩基性は脂肪族アミンであるプロカインの第3級アミンの塩基性に比べて弱い。
芳香族アミンや共役系のように窒素の非共有電子対が共鳴により非局在化する場合は、非共有電子対が供与されにくいので塩基性が弱いことを押さえておこう。
A 窒素にアルキル基が結合すると電子供与性電子効果により塩基性が強くなる。
窒素原子の電子密度が高いほど非共有電子対が供与されやすく塩基性は強い。
アルキル基は電子供与性の誘起効果を与える。供与可能な非共有電子対を持つ窒素にアルキル基が結合すると、アルキル基の電子供与性電子効果により窒素の電子密度が高まり非共有電子対を供与しやすくなることから、窒素の塩基性が強まる。
プロカインの第3級アミンは、窒素に3つのアルキル基が結合しており、アルキル基による電子供与性電子効果で供与可能な非共有電子対を持つ窒素の電子密度が高まっていることから塩基性が強いと考えられる。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)