カルボン酸,フェノール,アルコールの酸性度の序列 薬剤師国家試験93回問4の1
第93回薬剤師国家試験 問4の1
下記のA〜Dについて、酸性度の大きいものから順に並べなさい。
A. cyclohexanol
B. benzoic acid
C. fluoroacetic acid
D. p-methylphenol
第93回薬剤師国家試験 問4@ 解答解説
酸性度の大きいものから、
C. fluoroacetic acid >
B. benzoic acid >
D. p-methylphenol >
A. cyclohexanol
である。
★ 官能基の酸性度の序列
ブレンステッド酸における酸性の強さとはH+の放出のしやすさである。
官能基の酸性度は強いものから、
無機酸>カルボン酸>炭酸>フェノール>チオール>アルコール
という序列である。
この序列に従いA〜Dの酸性度を比較すると、
B. benzoic acid(カルボン酸)と C. fluoroacetic acid(カルボン酸) >
D. p-methylphenol(フェノール) >
A. cyclohexanol(アルコール)
となる。
★ 置換基による電子効果が共役塩基の安定性および酸の酸性度に与える影響
BとCはカルボン酸であるが、
その酸性度の比較には、
置換基による電子効果が物質の酸性度に与える影響を考える。
官能基の電子効果については
下記のリンク先を参照
誘起効果・共鳴効果とは
化合物中のある水素の酸性度について、
置換基の電子効果と共役塩基の安定性・塩基性の関係は下記の通り。
・ 置換基により電子供与性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは低くなり、
共役塩基の安定性は低くなるため、
酸の酸性度は弱くなる(酸解離定数Kaは小さく、pKaは大きくなる)。
・ 置換基により電子求引性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは高くなり、
共役塩基の安定性は高くなるので、
酸の酸性度は強くなる(Kaは大きく、pKaは小さくなる)。
Bのbenzoic acid では、
カルボン酸の共役塩基(COO:‐)について、
フェニル基による電子求引性電子効果により負電荷は分散されて安定性が高まっている。
よって、BのCOOHはフェニル基の電子求引効果で酸性度は強くなっている。
Cのfluoroacetic acidでは、、共役塩基(COO:‐)においてフッ素による電子求引性電子効果により負電荷は分散されて安定性が高まっている。よって、CのCOOHはフッ素の電子求引効果で酸性度は強くなっている。
フッ素は電気陰性度が大きく、電子求引性誘起効果が強力なため、
フェニル基よりもフッ素の方が電子求引効果が大きく、共役塩基の負電荷の安定性化効果が高い。
よって、フェニル基置換のBのカルボン酸よりもフッ素置換のCのカルボン酸の方が酸性度は大きい。
以上より、
設問の物質の酸性度の大きさの序列は下記の通り。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)