花粉症の薬物治療・フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液 102回薬剤師国家試験問278,279
102回薬剤師国家試験 問278−279
33歳女性。鼻づまりの症状が続いていたため、耳鼻科を受診したところ、
花粉症と診断され、以下の処方箋を薬局に持参した。
問278(実務)
患者に説明する内容として適切でないのはどれか。2つ選びなさい。
1 処方1による鼻づまりの解消効果はすぐに現れます。
2 処方2の服用中は、眠気を催すことがあるので注意してください。
3 処方3は、花粉飛散期は使用を継続してください。
4 処方4は、鼻の血管を拡げて症状をやわらげます。
5 来年からは花粉の飛散前に受診するようにしてください。
問279(薬剤)
処方3のフルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液に関する記述のうち、
正しいのはどれか。2つ選びなさい。
なお、本剤には、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、ポリソルベート80、
フェニルエチルアルコールなどが添加されている。
1 本剤は、無菌試験法に適合する。
2 本剤は、定量噴霧式の点鼻液であり、1噴霧当たりの有効成分含量は約0.9μgである。
3 フルチカゾンプロピオン酸エステルは、投与部位で活性を示した後、その部位で速やかに代謝・不活化されるアンテドラッグである。
4 本剤は、難水溶性のフルチカゾンプロピオン酸エステルが分散した水性懸濁液である。
5 ポリソルベート80は、微生物の発育を阻止する目的で添加されている。
102回薬剤師国家試験 問278(実務) 解答解説
◆ 1について
1 × 処方1(プランルカスト)による鼻づまりの解消効果はすぐに現れます。
プランルカストによる鼻づまり改善の効果発現には、
使用開始より数日から2週間を要すると考えられる。
花粉症などのアレルギー性鼻炎による鼻閉には、
ロイコトリエンが関与すると考えられている。
プランルカスト(オノン)は、
選択的システィニルロイコトリエン1(Cys-LT1)受容体遮断薬であり、
ロイコトリエンC4,D4,E4に拮抗し、
アレルギー性鼻炎による鼻閉を改善する。
アレルギー性鼻炎の鼻づまりに対するロイコトリエン拮抗薬の効果は、
服薬開始より数日から2週間を要すると考えられている。
なお、ロイコトリエンC4,D4,E4は、
システイン残基を持つので、システィニルロイコトリエン(Cys-LTs)と呼ばれる。
◆ 2について
2 ○ 処方2(エバスチン)の服用中は、眠気を催すことがあるので注意してください。
エバスチン(エバステル)は、
第2世代の選択的ヒスタミンH1受容体遮断薬であり、
ヒスタミン遊離抑制作用も有する。
エバスチンの中枢神経系におけるヒスタミンH1受容体遮断作用は弱いが、
服用により眠気を催すことがあるので、
本剤投与中の患者には自動車の運転など危険を伴う機械の操作に注意させることとされている。
◆ 3について
3 ○ 処方3(フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液)は、花粉飛散期は使用を継続してください。
フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液は、ステロイド点鼻液である。
ステロイド点鼻液には即効性はなく、
効果が出始めるのは使用開始から3〜5日後と考えられている。
よって、ステロイド点鼻液は、臨床効果を得るために継続的に使用する必要がある。
花粉症などの季節性のアレルギー疾患に用いる場合は、
その好発期を考慮して初期治療を開始し、
抗原との接触がなくなるまで続けることが望ましいとされる。
◆ 4について
4 × 処方4(トラマゾリン塩酸塩点鼻液)は、鼻の血管を拡げて症状をやわらげます。
→ 〇 処方4(トラマゾリン塩酸塩点鼻液)は、鼻の血管を収縮して症状をやわらげます。
トラマゾリンは、アドレナリンα受容体を刺激することにより、
鼻腔内の局所血管を収縮し、鼻粘膜の充血、腫脹を除去することで、
鼻づまりの症状を改善する。
◆ 5について
5 ○ 来年からは花粉の飛散前に受診するようにしてください。
花粉症の治療として、花粉の飛散前,または,症状がごく軽度の時から服薬を開始する初期療法という治療方法がある。
花粉症の初期療法により、発症を遅らせたり、シーズンを通して症状を軽くすることができる。
102回薬剤師国家試験 問279(薬剤) 解答解説
◆ 1について
1 × 本剤(フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液)は、無菌試験法に適合する。
無菌試験法は点鼻剤には適用されない。
無菌試験法は注射剤,腹膜透析用剤(血液透析用剤は適用されない),
点眼剤,眼軟膏剤,点耳剤に適用される。
◆ 2について
2 × 本剤は、定量噴霧式の点鼻液であり、1噴霧当たりの有効成分含量は約0.9μgである。
フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液50μgは、
定量噴霧式の点鼻液であり、1噴霧当たりの有効成分含量は約50μgである。
◆ 3について
3 ○ フルチカゾンプロピオン酸エステルは、投与部位で活性を示した後、その部位で速やかに代謝・不活化されるアンテドラッグである。
アンテドラッグとは、局所で活性を示した後、その部位で速やかに代謝・不活化される薬物であり、
副作用を抑制するよう設計されている。
アンテドラッグとして、外用で用いられるステロイドがあり、
フルチカゾンプロピオン酸エステルもその1つである。
◆ 4について
4 ○ 本剤は、難水溶性のフルチカゾンプロピオン酸エステルが分散した水性懸濁液である。
5 × ポリソルベート80は、微生物の発育を阻止する目的で添加されている。
フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻液(フルナーゼ点鼻液)は、
水中にフルチカゾンプロピオン酸エステルが分散した水性懸濁性点鼻液である。
ポリソルベート80は、界面活性剤であるが、本剤においては、
懸濁化剤として分散状態を安定化する目的で添加されていると考えられる。
懸濁液製剤において、界面活性剤が懸濁化剤として添加されることがあり、
界面張力低下により分散相粒子の凝集を抑制し、分散状態を安定化する役割を担う。
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