移動相の有機溶媒の割合と分離度 107回薬剤師国家試験問99の4

107回薬剤師国家試験 問99の4
固定相としてオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲル、移動相としてアセトニトリルと水の混合液を用いて、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼンの分離を液体クロマトグラフィーにより行った。この分離に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

4 移動相中のアセトニトリルの割合を大きくすることにより、各成分間の分離度が向上する。

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107回薬剤師国家試験 問99 解答解説

 

◆ 1について
1 × エチルベンゼン、トルエン、ベンゼンの順で溶出する。
→ 〇 ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンの順で溶出する。

 

オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルは
炭素数18の疎水性のアルキル基が結合したシリカゲルであり、極性が低い(疎水性が高い)。

 

固定相として極性の低い(疎水性の高い)オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルを用い、
移動相として極性の高い水とアセトニトリルの混液を用いた分配クロマトグラフィーは、
逆相分配クロマトグラフィーである。

 

逆相分配クロマトグラフィーでは固定相が溶質を保持する主要因として疎水性相互作用が働き、
極性の低い(疎水性の高い)溶質ほど固定相に保持されやすく、遅く溶出し、
極性の高い(疎水性の低い)溶質ほど固定相に保持されにくく、速く溶出する。

 

設問の化合物について、
極性の低い(疎水性の高い)順に、
エチルベンゼン→トルエン→ベンゼン
という序列である。

 

よって、
逆相分配クロマトグラフィーでエチルベンゼン、トルエン、ベンゼンの分離を行うと、
固定相のオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルに保持されやすいのは、
エチルベンゼン>トルエン>ベンゼンの順なので、
速く溶出されるものから、
ベンゼン→トルエン→エチルベンゼンの順である。

 

 

◆ 2について
2 〇 理論段高さの値が小さいカラムに変更することにより、各成分間の分離度が向上する。

 

理論段高さ(H)が小さいほどカラムの分離効率は高いことを示す。
よって、理論段高さの値が小さいカラムに変更することにより、各成分間の分離度が向上する。

 

理論段高さについては下記のリンク先を参照
理論段高さとは?102回問98の3

 

 

◆ 3について
3 × 移動相の流速と各成分間の分離係数は比例する。

 

移動相の流速と各成分間の分離係数は比例しない。
移動相の流速を速くすると保持時間は短くなると考えられる。
なお、理論段高さは最適流速で最小となる。

 

 

◆ 4について
4 × 移動相中のアセトニトリルの割合を大きくすることにより、各成分間の分離度が向上する。

 

移動相がアセトニトリルと水の混合溶媒の場合、
水よりも相対的に極性の低いアセトニトリルの含量を増やすと、
移動相の極性は低下する。

 

逆相分配クロマトグラフィーで移動相の極性が低下すると、
極性の低い(疎水性の高い)化合物は移動相との親和性が高くなり、
固定相に保持されにくくなるため、分離度は低下する。

 

関連問題
移動相の有機溶媒含量と質量分布比 96回問27b

 

 

◆ 5について
5 × 固定相にシリカゲル、移動相にn-ヘキサン−アセトン混液を用いても、溶出順は変わらない。

 

固定相に極性の大きいシリカゲルを用い、
移動相に極性の小さいn-ヘキサン−アセトン混液を用いるクロマトグラフィーは順相吸着クロマトグラフィーである。
順相吸着クロマトグラフィーでは、極性の大きい溶質ほど固定相に吸着されて保持されやすいため、遅く溶出する。

 

よって、シリカゲルを固定相とする順相吸着クロマトグラフィーでエチルベンゼン、トルエン、ベンゼンの分離を行うと、
極性の小さい溶質ほど速く溶出するため、
エチルベンゼン→トルエン→ベンゼンの順に溶出すると考えられる。

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