86回薬剤師国家試験問30 液体クロマトグラフ法

86回薬剤師国家試験 問30
液体クロマトグラフ法に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

a シリカゲルを固定相に用いる系では、溶質の保持を支配する主な要因は疎水結合である。
b イオン交換体を固定相に用いる系では、主に移動相のpHと塩濃度が解離基をもつ溶質の保持を決定する。
c C18充填剤 (ODS) を固定相、アセトニトリルと水の混液(体積比 =1:1)を移動相に用いる系では、フェノールはナフタレンよりも遅く溶離される。
d 三次元網目構造を有するサイズ排除型充填剤を固定相に用いる系では、充填剤の網目より大きい分子は小さい分子よりも一般に保持時間が短い。

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86回薬剤師国家試験 問30 解答解説

 

◆ aについて
a × シリカゲルを固定相に用いる系では、溶質の保持を支配する主な要因は疎水結合である。
→ 〇 シリカゲルを固定相に用いる系では、溶質の保持を支配する主な要因は水素結合である。

 

シリカゲルは分子表面にシラノール基(Si-OH)を持ち、
水素結合を形成することにより、
極性の大きい溶質を吸着することで保持する。

 

シリカゲルによる溶質の保持についてはは下記のリンク先を参照
シリカゲルによる保持 87回問28a

 

 

◆ bについて
b 〇 イオン交換体を固定相に用いる系では、主に移動相のpHと塩濃度が解離基をもつ溶質の保持を決定する。

 

関連問題
陽イオン交換クロマトグラフィーによるアミノ酸の分析 101回問100

 

 

◆ cについて
c × C18充填剤 (ODS) を固定相、アセトニトリルと水の混液(体積比 =1:1)を移動相に用いる系では、フェノールはナフタレンよりも遅く溶離される。

 

→ 〇 C18充填剤 (ODS) を固定相、アセトニトリルと水の混液(体積比 =1:1)を移動相に用いる系では、フェノールはナフタレンよりも速く溶離される。

 

固定相として極性の低い(疎水性の高い)C18充填剤 (ODS)を用い、
移動相として極性の高い(疎水性の低い)アセトニトリルと水の混液(体積比 =1:1)を用いた分配クロマトグラフィーは、逆相分配クロマトグラフィーである。

 

逆相分配クロマトグラフィーでは固定相が溶質を保持する主要因として疎水性相互作用が働き、
極性の低い(疎水性の高い)溶質ほど固定相に保持されやすく、遅く溶出し、
極性の高い(疎水性の低い)溶質ほど固定相に保持されにくく、速く溶出する。

 

フェノールはナフタレンよりも極性が高いので、
C18充填剤 (ODS) を固定相として用いる逆相分配クロマトグラフィーでは、
フェノールの方が固定相に保持されにくく、速く溶離される。

 

 

◆ dについて
d 〇 三次元網目構造を有するサイズ排除型充填剤を固定相に用いる系では、充填剤の網目より大きい分子は小さい分子よりも一般に保持時間が短い。

 

サイズ排除型充填剤を固定相に用いる系(ゲルろ過クロマトグラフィー)では、
サイズの小さい溶質ほど固定相ゲルの細孔に入り込むため保持時間は長く、遅く溶出する。

 

下記のリンク先を参照
サイズ排除(ゲルろ過)クロマトグラフィーの原理 97回問97の4

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