96回薬剤師国家試験問27 トルエン、ベンゼン、安息香酸の逆相分配クロマトグラフィーによる分離

96回薬剤師国家試験 問27
固定相としてオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲル、移動相としてアセトニトリルと緩衝液(pH3)の混合溶媒を用いて、ベンゼン、トルエン及び安息香酸の分離を液体クロマトグラフィーにより行った。
次の記述のうち、正しいものはどれか。ただし、質量分布比を k とする。

 

a トルエン、ベンゼン、安息香酸の順に溶出する。

 

b 移動相中のアセトニトリルの含量を増やすと、ベンゼン、トルエン及び安息香酸のkは大きくなる。

 

c ベンゼン、トルエン及び安息香酸の保持には、疎水性相互作用が働いている。

 

d 移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、安息香酸のkは小さくなる。

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96回薬剤師国家試験 問27 解答解説

 

◆ aについて
a × トルエン、ベンゼン、安息香酸の順に溶出する。
→ 〇 安息香酸、ベンゼン、トルエンの順に溶出する。

 

c 〇 ベンゼン、トルエン及び安息香酸の保持には、疎水性相互作用が働いている。

 

 

オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルは
炭素数18の疎水性のアルキル基が結合したシリカゲルであり、極性が低い(疎水性が高い)。

 

固定相として極性の低い(疎水性の高い)オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルを用い、
移動相として極性の高い緩衝液とアセトニトリルの混液を用いた分配クロマトグラフィーは、
逆相分配クロマトグラフィーである。

 

逆相分配クロマトグラフィーでは固定相が溶質を保持する主要因として疎水性相互作用が働き、
極性の低い(疎水性の高い)溶質ほど固定相に保持されやすく、遅く溶出し、
極性の高い(疎水性の低い)溶質ほど固定相に保持されにくく、速く溶出する。

 

設問の化合物について、
極性の低い(疎水性の高い)順に、
トルエン→ベンゼン→安息香酸
という序列である。

 

よって、
逆相分配クロマトグラフィーでベンゼン、トルエン、安息香酸の分離を行うと、
固定相のオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルに保持されやすいのは、
トルエン>ベンゼン>安息香酸の順なので、
速く溶出されるものから、
安息香酸→ベンゼン→トルエンの順である。

 

 

◆ bについて
b × 移動相中のアセトニトリルの含量を増やすと、ベンゼン、トルエン及び安息香酸のkは大きくなる。
→ 〇 移動相中のアセトニトリルの含量を増やすと、ベンゼン、トルエン及び安息香酸のkは小さくなる。

 

質量分布比については下記のリンク先を参照
質量分布比とは 99回問97の1

 

質量分布比(k)が大きいほど、
その成分は固定相に保持される量が多いことを示す。

 

移動相がアセトニトリルと緩衝液(pH3)の混合溶媒の場合、
緩衝液よりも相対的に極性の低いアセトニトリルの含量を増やすと、
移動相の極性は低下する。

 

逆相分配クロマトグラフィーで移動相の極性が低下すると、
極性の低い(疎水性の高い)芳香族化合物は移動相に存在する量が増えるため、
固定相に保持される量は減少し、
質量分布比は小さくなる。

 

関連問題
移動相の有機溶媒の割合と分離度 107回問99の4

 

 

◆ dについて
d 〇 移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、安息香酸の k は小さくなる。

 

移動相中の緩衝液のpHを3から7に変えると、
安息香酸のカルボキシ基でプロトンが放出されやすくなり、
分子形の割合が減少し、イオン形の割合が増える。
分子形からイオン形に変化すると極性が高くなるので、
低極性固定相のオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルとの親和性は低下し、
固定相に保持されにくくなり、
質量分布比は小さくなる。

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