92回薬剤師国家試験問26 アントラセン、ナフタレン、ベンゼンの逆相クロマトグラフィーによる分離

92回薬剤師国家試験 問26
固定相としてオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲル、
移動相としてメタノールと水の混液を用いて、
芳香族化合物の混合物(アントラセン、ナフタレン、ベンゼン)の分離を液体クロマトグラフィーにより行った。
次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

a アントラセン、ナフタレン、ベンゼンの順に溶出する。
b 移動相のメタノールの含量を増やすと、芳香族化合物の質量分布比(k)は小さくなる。
c カラム温度を上げると、芳香族化合物のkは小さくなる。
d 移動相に0.1 vol%の酢酸を加えても、芳香族化合物のkはほとんど変わらない。

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92回薬剤師国家試験 問26 解答解説

 

◆ aについて
a × アントラセン、ナフタレン、ベンゼンの順に溶出する。
→ 〇 ベンゼン、ナフタレン、アントラセンの順に溶出する

 

オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルは
炭素数18の疎水性のアルキル基が結合したシリカゲルであり、極性が低い(疎水性が高い)。

 

固定相として極性の低い(疎水性の高い)オクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルを用い、
移動相として極性の高い(疎水性の低い)水とメタノールの混液を用いた分配クロマトグラフィーは、
逆相分配クロマトグラフィーである。

 

逆相分配クロマトグラフィーでは固定相が溶質を保持する主要因として疎水性相互作用が働き、
極性の低い(疎水性の高い)溶質ほど固定相に保持されやすく、遅く溶出し、
極性の高い(疎水性の低い)溶質ほど固定相に保持されにくく、速く溶出する。

 

設問の芳香族化合物について、
極性の低い(疎水性の高い)順に、
アントラセン→ナフタレン→ベンゼン
という序列である。

 

よって、
逆相分配クロマトグラフィーでアントラセン、ナフタレン、ベンゼンの分離を行うと、
固定相のオクタデシルシリル(ODS)化シリカゲルに保持されやすいのは、
アントラセン>ナフタレン>ベンゼンの順なので、
速く溶出されるものから、
ベンゼン→ナフタレン→アントラセンの順である。

 

 

◆ bについて
b 〇 移動相のメタノールの含量を増やすと、芳香族化合物の質量分布比(k)は小さくなる。

 

質量分布比については下記のリンク先を参照
質量分布比とは 99回問97の1

 

質量分布比(k)が大きいほど、
その成分は固定相に保持される量が多いことを示す。

 

移動相がメタノールと水の混液の場合、
水よりも相対的に極性の低いメタノールの含量を増やすと、
移動相の極性は低下する。

 

逆相分配クロマトグラフィーで移動相の極性が低下すると、
極性の低い(疎水性の高い)芳香族化合物は移動相に存在する量が増えるため、
固定相に保持される量は減少し、
質量分布比は小さくなる。

 

関連問題
移動相の有機溶媒の割合と分離度 107回問99の4

 

 

◆ cについて
c 〇 カラム温度を上げると、芳香族化合物のkは小さくなる。

 

温度の上昇に伴い、
移動相の溶媒に対する溶質の溶解度が上昇するため、
固定相に保持される量は減少し、
質量分布比は小さくなる。

 

 

◆ dについて
d 〇 移動相に0.1 vol%の酢酸を加えても、芳香族化合物のkはほとんど変わらない。

 

移動相がメタノールと水の混液において、
移動相に0.1 vol%の酢酸を加えると、
移動相のpHは低下する。

 

アントラセン、ナフタレン、ベンゼンには酸性官能基または塩基性官能基が存在せず、
酢酸を加えた程度のpHの変化では分子形・イオン形の割合は変化しないため、
質量分布比はほとんど変わらない。

 

関連問題
移動相のpHと質量分布比 96回問27d

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