薬剤師国家試験過去問題 物理分析化学 薄層クロマトグラフィー Rf値 89回問12c
第89回薬剤師国家試験 問12c
安息香酸誘導体に関する記述cの正誤を判定してみよう。
c 〇 安息香酸エチルの酸触媒加水分解反応について、シリカゲルを固定相とする薄層クロマトグラフ法にて追跡する際、安息香酸のRf値は通常、安息香酸エチルのRf値より小さい。
第89回薬剤師国家試験 問12c 解答解説
c ○ 安息香酸エチルの酸触媒加水分解反応について、シリカゲルを固定相とする薄層クロマトグラフ法にて追跡する際、安息香酸のRf値は通常、安息香酸エチルのRf値より小さい。
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値は下記のように計算される。
すなわち、試料中の成分が固定相に保持されやすいほど成分の移動距離が短くなるのでその成分のRf値は低くなり、成分が固定相に保持されにくいほど成分の移動距離が長くなるのでその成分のRf値は高くなる。
シリカゲルは表面にシラノール基(Si-OH)があるので極性が高く、そのため極性の高い物質と親和性が高い。よって、シリカゲルを固定相とする薄層クロマトグラフィーでは、試料中の成分の極性が高いほどシリカゲルに保持されやすく、移動距離が短くなり、Rf値が小さくなる。試料中の成分の極性が低いほどシリカゲルに保持されにくく、移動距離が長くなり、Rf値が大きくなる。
安息香酸はカルボキシ基があるので相対的に極性が大きく、また、シラノール基(Si-OH)と水素結合を形成するためシリカゲルに保持されやすい。
安息香酸エチルは安息香酸より相対的に極性が小さいため、安息香酸エチルは安息香酸よりもシリカゲルとの親和性が低い。
よって、シリカゲルを固定相とする薄層クロマトグラフィーでは、相対的に極性の大きい安息香酸の方が安息香酸エチルよりもRf値が小さい。